ロウ画作品
「蝋画(ろうが)」は、ルーマニア出身の画家ビクトル・ブローネル(1903-1966)が、第二次大戦中の絵の具が不足していた時期、身近にある物で描画を試みる中から見出した「ロウソクデッサン」が元祖です。
その後雑誌「アトリエ」の1952年12月号誌上でこの技法が瀧口修造により紹介され、その記事を見た画家豊田一男が創意工夫を重ね、2年後の1954年に個展を開いた際「蝋画」と名付け、新しいジャンルとして発表したのが日本でのろう画の始まりです。
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この「蝋画」という技法を、主宰者が誰でも簡単にできるようにアレンジして「ロウ画」と名付けました。
20年間で合同作品9シリーズ、66点の作品があります。
お知らせ
地域の子どもたちが「ロウ画」の技法で描いた絵が絵本になりました。
「たつたひめ・龍田古道&ふるさとの万葉歌」
ロウ画絵本/A5サイズ24ページ
価格 1,200円(税・送料込)
![](https://kodomoatelier.com/wordpress/wp-content/uploads/2021/10/goods2-3.jpg)
ロウ画作品
●飛びゆく倉
![(一)むかしむかし、信濃のくにに 命連というひとりのほうしがいました。 命連は まだおぼうさまとして みとめられていませんでしたので、 奈良の東大寺というおおきなお寺で おゆるしの式をしてもらいました。命連さまは おゆるしをもらっても くににはかえらず、奈良の 信貴山という山にこもって、 毘沙門天さまを おまつりし、 さらに しゅぎょうをつみました。](https://kodomoatelier.com/wordpress/wp-content/uploads/2021/10/tobikura01.jpg)
むかしむかし、信濃のくにに 命連というひとりのほうしがいました。 命連は まだおぼうさまとして みとめられていませんでしたので、 奈良の東大寺というおおきなお寺で おゆるしの式をしてもらいました。命連さまは おゆるしをもらっても くににはかえらず、奈良の 信貴山という山にこもって、 毘沙門天さまを おまつりし、 さらに しゅぎょうをつみました。
![(二) あるとき、ひとりのまずしい男が 命連さまのところへ おまいりにきました。そして 「わたしは、わるい心がけのせいで なにをしてもうまくいきません。 しかし きょうからは心をいれかえて いっしょうけんめいはたらきますので、 どうかわたしを 村いちばんの お金もちにしてください。」 と おねがいをしました。 そこで命連さまは、毘沙門天さまの おはなしをされました。](https://kodomoatelier.com/wordpress/wp-content/uploads/2021/10/tobikura02.jpg)
あるとき、ひとりのまずしい男が 命連さまのところへ おまいりにきました。そして 「わたしは、わるい心がけのせいで なにをしてもうまくいきません。 しかし きょうからは心をいれかえて いっしょうけんめいはたらきますので、 どうかわたしを 村いちばんの お金もちにしてください。」 と おねがいをしました。 そこで命連さまは、毘沙門天さまの おはなしをされました。
![(三) 「毘沙門さまは よろい・かぶとで 身をかためた 軍神のおすがたを されています。それはいろいろな わるい心に おもいきって たちむか われるためです。あなたが心から 毘沙門さまを信じて、こまっている人 のために 一生けんめいはたらくなら、 わたしが毘沙門さまからいただいた 空鉢護法というお力で ねがいを ききとどけてあげましょう。」 と、説かれました。 「はい、わかりました。」](https://kodomoatelier.com/wordpress/wp-content/uploads/2021/10/tobikura03.jpg)
「毘沙門さまは よろい・かぶとで 身をかためた 軍神のおすがたを されています。それはいろいろな わるい心に おもいきって たちむか われるためです。あなたが心から 毘沙門さまを信じて、こまっている人 のために 一生けんめいはたらくなら、 わたしが毘沙門さまからいただいた 空鉢護法というお力で ねがいを ききとどけてあげましょう。」 と、説かれました。 「はい、わかりました。」
![(四)それから、男は 京都の山崎という里で、 おしえのとおりに 一生けんめい はたらきました。そして命連さまが 信貴山から 空鉢をとばされるたびに お供えをいれて返していました。 やがて、たくさんの金銀や田畑をもつ お金もちになり、人びとから 山崎長者とよばれるようになりました。 あるとしの秋のこと。 長者のいえでは、人びとがあつまり よいお米が たくさんとれた おいわいをしていました。](https://kodomoatelier.com/wordpress/wp-content/uploads/2021/10/tobikura04.jpg)
それから、男は 京都の山崎という里で、 おしえのとおりに 一生けんめい はたらきました。そして命連さまが 信貴山から 空鉢をとばされるたびに お供えをいれて返していました。 やがて、たくさんの金銀や田畑をもつ お金もちになり、人びとから 山崎長者とよばれるようになりました。 あるとしの秋のこと。 長者のいえでは、人びとがあつまり よいお米が たくさんとれた おいわいをしていました。
![(五)のどかなときを楽しんでいると とつぜん、たくさんのお米を いれたばかりの おおきな倉が ゆさゆさと、ゆれだしました。 「や、や。どうした、どうした。 こんなにおもい倉がゆれるとは どうしたことだ。」 ひどいゆれに、長者のいえの人も あつまっていた村の人たちも わけがわからず、おおさわぎです。 やがて ゆれている倉の戸があき、 ひとつの鉢がころがりでてきました。](https://kodomoatelier.com/wordpress/wp-content/uploads/2021/10/tobikura05.jpg)
のどかなときを楽しんでいると とつぜん、たくさんのお米を いれたばかりの おおきな倉が ゆさゆさと、ゆれだしました。 「や、や。どうした、どうした。 こんなにおもい倉がゆれるとは どうしたことだ。」 ひどいゆれに、長者のいえの人も あつまっていた村の人たちも わけがわからず、おおさわぎです。 やがて ゆれている倉の戸があき、 ひとつの鉢がころがりでてきました。
![(六)長者は その鉢をみたとたん 「しまった。お供えがもったいなくて 倉に入れたまま わすれておった。」 といって あわてて鉢に やさいや お米をいれようとしました。しかし 鉢は するすると倉の下にはいって おもい倉をもちあげはじめたのです。 あまりのことに びっくりしている 人たちの あたまのうえをこえて、 倉は 空たかく うきあがりました。 そして ふわりふわりと 山のほうへ むかって とんでいきました。](https://kodomoatelier.com/wordpress/wp-content/uploads/2021/10/tobikura06.jpg)
長者は その鉢をみたとたん 「しまった。お供えがもったいなくて 倉に入れたまま わすれておった。」 といって あわてて鉢に やさいや お米をいれようとしました。しかし 鉢は するすると倉の下にはいって おもい倉をもちあげはじめたのです。 あまりのことに びっくりしている 人たちの あたまのうえをこえて、 倉は 空たかく うきあがりました。 そして ふわりふわりと 山のほうへ むかって とんでいきました。
![(七)ことしとれたばかりの 村の米を みうしなってはたいへんと、 人びとがいっせいにおいかけます。 「倉まて、倉まて。」 倉をのせた鉢は どんどんとんで、 川をくだり、野をこえ、山をこえ、 やがて倉は、こうようがうつくしい 信貴山へおりていきました。 そして 命連さまのおすまいのそばに どっかと どだいをすえました。 長者たちが やっとのことで 命連さまのもとをたずねていくと](https://kodomoatelier.com/wordpress/wp-content/uploads/2021/10/tobikura07.jpg)
ことしとれたばかりの 村の米を みうしなってはたいへんと、 人びとがいっせいにおいかけます。 「倉まて、倉まて。」 倉をのせた鉢は どんどんとんで、 川をくだり、野をこえ、山をこえ、 やがて倉は、こうようがうつくしい 信貴山へおりていきました。 そして 命連さまのおすまいのそばに どっかと どだいをすえました。 長者たちが やっとのことで 命連さまのもとをたずねていくと
![(八)「おまちしておりました。 あなたは毘沙門さまのおしえどおり よくはたらき りっぱな長者に なられました。それに わたくしが 鉢をとばせば、すぐにたくさんの お米や やさいをいれて、かえして くださった。ありがたいことです。」 と はなしはじめられました。 「もうしわけありません。わたしが 命連さまから うけたご恩をわすれて 鉢を 倉にしまっておったので、 おこっておられるのですね。」](https://kodomoatelier.com/wordpress/wp-content/uploads/2021/10/tobikura08.jpg)
「おまちしておりました。 あなたは毘沙門さまのおしえどおり よくはたらき りっぱな長者に なられました。それに わたくしが 鉢をとばせば、すぐにたくさんの お米や やさいをいれて、かえして くださった。ありがたいことです。」 と はなしはじめられました。 「もうしわけありません。わたしが 命連さまから うけたご恩をわすれて 鉢を 倉にしまっておったので、 おこっておられるのですね。」
![(九)と 長者が おそるおそるきくと 「これで わかりましたか。 あなたが 初めの心をわすれないで 一生けんめい はたらくなら 村は ますますさかえるでしょう。 とんできたこの倉は わたしが おあずかりして もっとよい倉が もてるようがんばりなさい。 中のお米は ここではいらないので すべて お返ししましょう。」 といわれるなり あの鉢をとりだして、 倉のまえへ なげられました。](https://kodomoatelier.com/wordpress/wp-content/uploads/2021/10/tobikura09.jpg)
と 長者が おそるおそるきくと 「これで わかりましたか。 あなたが 初めの心をわすれないで 一生けんめい はたらくなら 村は ますますさかえるでしょう。 とんできたこの倉は わたしが おあずかりして もっとよい倉が もてるようがんばりなさい。 中のお米は ここではいらないので すべて お返ししましょう。」 といわれるなり あの鉢をとりだして、 倉のまえへ なげられました。
![(十)そして 一つの俵を 鉢の上にのせ じゅもんを となえはじめられました。 すると 倉の中からつぎつぎに米俵が でてきて、鉢をせんとうに まるで むらすずめがとびたつように 空にむかって とんでいきました。 山をこえ、野をこえ、川をのぼって すべての米俵が 山崎の長者の家に もどっていきました。 長者たちは 命連さまに ふかく おれいをいい 大よろこびで 家にかえっていきました。](https://kodomoatelier.com/wordpress/wp-content/uploads/2021/10/tobikura10.jpg)
そして 一つの俵を 鉢の上にのせ じゅもんを となえはじめられました。 すると 倉の中からつぎつぎに米俵が でてきて、鉢をせんとうに まるで むらすずめがとびたつように 空にむかって とんでいきました。 山をこえ、野をこえ、川をのぼって すべての米俵が 山崎の長者の家に もどっていきました。 長者たちは 命連さまに ふかく おれいをいい 大よろこびで 家にかえっていきました。
●まほうのクローバー
![(一) 森へある王国に、マーリンという魔術師がいた。ある日、騎士たちを ひろばにあつめていった。「きょうから七日目の朝、ここから十二の丘をこえた みわくの森に 魔法のクローバーがはえるという。あらゆることに、たくさんのしあわせをよぶ クローバーだ。森のどこにはえるか わからないが、だれか、その魔法のクローバーを さがしに行ってくれぬか」騎士たちは、ふかいためいきをついた。 「この王国よりも ずっとひろい森のなかで、たった一本のクローバーをさがすなんて…」騎士たちは、ぞろぞろと かえって行った。ひとりの 白いマントの騎士、シドをのこして。シドは、森をめざして 馬をはしらせた。その森についたのは、二日目の夜だった。 クローバーがはえるまであと五日。](https://kodomoatelier.com/wordpress/wp-content/uploads/2021/10/mahou01.jpg)
ある王国に、マーリンという魔術師がいた。ある日、騎士たちを ひろばにあつめていった。「きょうから七日目の朝、ここから十二の丘をこえた みわくの森に 魔法のクローバーがはえるという。あらゆることに、たくさんのしあわせをよぶ クローバーだ。森のどこにはえるか わからないが、だれか、その魔法のクローバーを さがしに行ってくれぬか」騎士たちは、ふかいためいきをついた。 「この王国よりも ずっとひろい森のなかで、たった一本のクローバーをさがすなんて…」騎士たちは、ぞろぞろと かえって行った。ひとりの 白いマントの騎士、シドをのこして。シドは、森をめざして 馬をはしらせた。その森についたのは、二日目の夜だった。 クローバーがはえるまであと五日。
![(二) 新しい土よく朝、シドは 大地の王子ノームをたずねた。「今日から五日目の朝、この森のどこに 魔法のクローバーが はえるか、ごぞんじありませんか」 「こんなに古く かわいた土では、はえやしない。もう五千年も、土を入れかえたことがないのだ」 「では、土を入れかえれば よいのですね」「そうだ。なにかあたらしいものを手にするにはあたらしいことを、 みずからがしなくてはならぬ」「どこで あたらしい土を見つけられますか」「カウルズという 十二本足の小さな牛たちの国がある。そこの土ならばそだつだろう」シドはお礼をいい、 馬にのってさがしに行った。カウルズたちの国は、ゆたかな 土のかおりが立ちこめていた。 シドは、土を ふくろにつめ、馬のせにくくりつけて もちかえった。そして、かたい土を ほりかえし、あたらしい土を しきつめた。あと四日である。](https://kodomoatelier.com/wordpress/wp-content/uploads/2021/10/mahou02.jpg)
よく朝、シドは 大地の王子ノームをたずねた。「今日から五日目の朝、この森のどこに 魔法のクローバーが はえるか、ごぞんじありませんか」 「こんなに古く かわいた土では、はえやしない。もう五千年も、土を入れかえたことがないのだ」 「では、土を入れかえれば よいのですね」「そうだ。なにかあたらしいものを手にするにはあたらしいことを、 みずからがしなくてはならぬ」「どこで あたらしい土を見つけられますか」「カウルズという 十二本足の小さな牛たちの国がある。そこの土ならばそだつだろう」シドはお礼をいい、 馬にのってさがしに行った。カウルズたちの国は、ゆたかな 土のかおりが立ちこめていた。 シドは、土を ふくろにつめ、馬のせにくくりつけて もちかえった。そして、かたい土を ほりかえし、あたらしい土を しきつめた。あと四日である。
![(三) 湖四日目の朝、シドは、みわくの森の湖に行った。 まわりには スイレンがさき、しずかだった。湖の女王が すがたを あらわした。「スイレンたちが おどろくでは ありませんか。スイレンが歌わないと 湖の水があふれるのです」「なぜスイレンが歌わないと あふれるのですか」「水の出口がないのです。湖からは 川も小川もながれでてなく、スイレンだけがたよりなのです」「では、わたしが小川をほりましょう。でも、魔法のクローバーをそだてるには、どのくらいの水がいるのか、おしえてくださいませんか」「たくさんいります。小川から水をひきなさい」シドは、剣を馬のせなかに さかさまにしばり、土をしいた所へ馬をはしらせた。馬がとおると、あとには 剣がえぐった みぞができ、そこへ湖の水がながれこんで 小川ができた。魔法のクローバーが めを出すまで、あと三日。](https://kodomoatelier.com/wordpress/wp-content/uploads/2021/10/mahou03.jpg)
四日目の朝、シドは、みわくの森の湖に行った。 まわりには スイレンがさき、しずかだった。湖の女王が すがたを あらわした。「スイレンたちが おどろくでは ありませんか。スイレンが歌わないと 湖の水があふれるのです」「なぜスイレンが歌わないと あふれるのですか」「水の出口がないのです。湖からは 川も小川もながれでてなく、スイレンだけがたよりなのです」「では、わたしが小川をほりましょう。でも、魔法のクローバーをそだてるには、どのくらいの水がいるのか、おしえてくださいませんか」「たくさんいります。小川から水をひきなさい」シドは、剣を馬のせなかに さかさまにしばり、土をしいた所へ馬をはしらせた。馬がとおると、あとには 剣がえぐった みぞができ、そこへ湖の水がながれこんで 小川ができた。魔法のクローバーが めを出すまで、あと三日。
![(四) 木五日目の朝、木々の女王セコイアを たずねた。「もし、良い土と水があれば、魔法のクローバーをそだてるのに どれだけの日光がいりますか」「日かげと日ひなたが 半々になればよい。しかし、この森のどこに そんな所があるのか。ここは どこにいっても 日かげばかりだ」「もしよろしければ、わたしに 木々のかれ枝をすこしおとさせて いただけませんか」「すきにするとよい。この森は もう五千年も手入れを していないので、 かれ枝をおとすとよい日光が はいってくるだろう」シドは女王にお礼をいうと、土をしいたところにかえった。そして、木にのぼり、かれ枝を おとしていった。おわると ねころんで、木々のあいだにあらわれた よぞらを みあげた。星が うつくしくかがやいている。クローバーが めを出すまで、あと二日。](https://kodomoatelier.com/wordpress/wp-content/uploads/2021/10/mahou04.jpg)
五日目の朝、木々の女王セコイアを たずねた。「もし、良い土と水があれば、魔法のクローバーをそだてるのに どれだけの日光がいりますか」「日かげと日ひなたが 半々になればよい。しかし、この森のどこに そんな所があるのか。ここは どこにいっても 日かげばかりだ」「もしよろしければ、わたしに 木々のかれ枝をすこしおとさせて いただけませんか」「すきにするとよい。この森は もう五千年も手入れを していないので、 かれ枝をおとすとよい日光が はいってくるだろう」シドは女王にお礼をいうと、土をしいたところにかえった。そして、木にのぼり、かれ枝を おとしていった。おわると ねころんで、木々のあいだにあらわれた よぞらを みあげた。星が うつくしくかがやいている。クローバーが めを出すまで、あと二日。
![(五) 小石六日目、シドは、馬にのって、すべての石の母ストンが住む、きびしき岩山に たどりついた。「ストンさま。土、水、日光。このほかには、なにがあれば 魔法のクローバーはそだちますか」「その三つで クローバーはそだちます。しかし魔法のクローバーは、うんとよわいので 土の中に 小石があると うまくそだちません。はやくかえって、ひとつひとつ 小石を とりのぞいて あげなさい」「だいじなことを おしえてくださいました」シドは おれいをいうと、おおいそぎでもどった。そして、土をほりかえし、たくさんの こまかい小石をていねいに ひとつひとつ つまみだした。「もう少しで、これまでの下ごしらえを、すべて ムダにして しまうところだった。」さいごの夜、つみ上げられた たくさんの小石のよこで、シドはなかなかねつけなかった。](https://kodomoatelier.com/wordpress/wp-content/uploads/2021/10/mahou05.jpg)
六日目、シドは、馬にのって、すべての石の母ストンが住む、きびしき岩山に たどりついた。「ストンさま。土、水、日光。このほかには、なにがあれば 魔法のクローバーはそだちますか」「その三つで クローバーはそだちます。しかし魔法のクローバーは、うんとよわいので 土の中に 小石があると うまくそだちません。はやくかえって、ひとつひとつ 小石を とりのぞいて あげなさい」「だいじなことを おしえてくださいました」シドは おれいをいうと、おおいそぎでもどった。そして、土をほりかえし、たくさんの こまかい小石をていねいに ひとつひとつ つまみだした。「もう少しで、これまでの下ごしらえを、すべて ムダにして しまうところだった。」さいごの夜、つみ上げられた たくさんの小石のよこで、シドはなかなかねつけなかった。
![(六) 暗闇夜中、ずるがしこい魔女の モルガナがあられた。「あしたの朝、この森に 魔法のクローバーがめを出す。しかし、マーリンは おまえにウソをついたのだ。わたしが、 魔法のクローバーをつみとったものは、三日のうちに 死んでしまうように のろいを かけたからだ」「でたらめだ。わたしが 死んでも マーリンどのは、どんな とくがあるというのだ」「そのクローバーを つみとらなければ、マーリンが死んでしまうからだ。だから、だれかにそれを つませたくて、森におくりこんだのさ」「ではこんやのうちに城へかえり、マーリンどのをつれてこよう。あのお方に、つみとっていただけば、すべてうまくいくだろう」ウソをみぬかれた魔女は くらやみにきえた。「うまくいっていることに目をつけ、なにもしないで よこどりしようとしたのか…」](https://kodomoatelier.com/wordpress/wp-content/uploads/2021/10/mahou06.jpg)
夜中、ずるがしこい魔女の モルガナがあられた。「あしたの朝、この森に 魔法のクローバーがめを出す。しかし、マーリンは おまえにウソをついたのだ。わたしが、 魔法のクローバーをつみとったものは、三日のうちに 死んでしまうように のろいを かけたからだ」「でたらめだ。わたしが 死んでも マーリンどのは、どんな とくがあるというのだ」「そのクローバーを つみとらなければ、マーリンが死んでしまうからだ。だから、だれかにそれを つませたくて、森におくりこんだのさ」「ではこんやのうちに城へかえり、マーリンどのをつれてこよう。あのお方に、つみとっていただけば、すべてうまくいくだろう」ウソをみぬかれた魔女は くらやみにきえた。「うまくいっていることに目をつけ、なにもしないで よこどりしようとしたのか…」
![(七) 風と雨よく朝、シドは めを出すのを まちつづけた。するととつぜん、風がふき、運の神ウインドがきらきらと光る みどり色の雨を ふらせながら、ゆっくりと よこぎっていた。その雨は、まい年 王国に ふりそそぐもので、べたべたしていて、人々にきらわれていた。 しかし、この雨の しょう体こそ 魔法のクローバーの タネだった。タネは みわくの森じゅうに ふりそそいだ。そして、タネが しっかりとねづいたのは、シドが 土をしき、水をひき、日光をあて、小石をとりのぞいた、ほんの小さなところだけだった。ほかのところに しみこんだ タネたちは、すぐに かれてしまった。タネは、またたくまに めを出すと、かぞえきれないほどの 魔法のクローバーになった。](https://kodomoatelier.com/wordpress/wp-content/uploads/2021/10/mahou07.jpg)
よく朝、シドは めを出すのを まちつづけた。するととつぜん、風がふき、運の神ウインドがきらきらと光る みどり色の雨を ふらせながら、ゆっくりと よこぎっていた。その雨は、まい年 王国に ふりそそぐもので、べたべたしていて、人々にきらわれていた。 しかし、この雨の しょう体こそ 魔法のクローバーの タネだった。タネは みわくの森じゅうに ふりそそいだ。そして、タネが しっかりとねづいたのは、シドが 土をしき、水をひき、日光をあて、小石をとりのぞいた、ほんの小さなところだけだった。ほかのところに しみこんだ タネたちは、すぐに かれてしまった。タネは、またたくまに めを出すと、かぞえきれないほどの 魔法のクローバーになった。
![(八) 芽シドは、そらをみあげ りょう手をくみ、目をとじた。すると こえがきこえてきた。 「白き騎士、シドよ。わたしは、運の神、ウインドだ。いつも このきせつになると、こうして、国じゅうに 魔法のクローバーのタネをまいている。つまり、すべての人々に、なかよく しあわせを わけあたえているのだ。 おまえのもとで、めを出したのは、おまえがちゃんと 下ごしらえをして まっていたからだ。わたしは、いつもどおりのことを したまでだ。しあわせなどというものは、いつだって 手のとどくところにある。それを つかめない人は、ラクをして つかもうと しているからなのだ」そういいのこすと、ウインドは、また タネをふらせに、森を とおりすぎていった。 神のことばを かみしめた、シドは、魔法のクローバーをつみとって 森を あとにした。](https://kodomoatelier.com/wordpress/wp-content/uploads/2021/10/mahou08.jpg)
シドは、そらをみあげ りょう手をくみ、目をとじた。すると こえがきこえてきた。 「白き騎士、シドよ。わたしは、運の神、ウインドだ。いつも このきせつになると、こうして、国じゅうに 魔法のクローバーのタネをまいている。つまり、すべての人々に、なかよく しあわせを わけあたえているのだ。 おまえのもとで、めを出したのは、おまえがちゃんと 下ごしらえをして まっていたからだ。わたしは、いつもどおりのことを したまでだ。しあわせなどというものは、いつだって 手のとどくところにある。それを つかめない人は、ラクをして つかもうと しているからなのだ」そういいのこすと、ウインドは、また タネをふらせに、森を とおりすぎていった。 神のことばを かみしめた、シドは、魔法のクローバーをつみとって 森を あとにした。
![(九) 幸運「マーリンどの、これを ごらんください」王国に もどったシドは、両手いっぱいの魔法のクローバーを さしだした。 マーリンは、まんぞくそうに うなずいた。 「そなたは、くろうして 土をはこび、湖の女王に 手をかし、夜中じゅう 枝をおとし、小石をひろい、魔女に そそのかされても、じぶんを しんじつづけておったな。しあわせをつかむことができたのは そなたがみずから しあわせをまねこうと、下ごしらえをしたからだ。 わたしのしたことは、ただ そなたを森へと むかわせた ことだけなのだ」 シドは おれいをいうと、馬にまたがり たびにでた。そして、このものがたりを人々にはなし、しあわせを わけあたえつづけた。かれにとって このたびとは あらたな 下ごしらえの はじまりだったのだ。 おわり](https://kodomoatelier.com/wordpress/wp-content/uploads/2021/10/mahou09.jpg)
「マーリンどの、これを ごらんください」王国に もどったシドは、両手いっぱいの魔法のクローバーを さしだした。 マーリンは、まんぞくそうに うなずいた。 「そなたは、くろうして 土をはこび、湖の女王に 手をかし、夜中じゅう 枝をおとし、小石をひろい、魔女に そそのかされても、じぶんを しんじつづけておったな。しあわせをつかむことができたのは そなたがみずから しあわせをまねこうと、下ごしらえをしたからだ。 わたしのしたことは、ただ そなたを森へと むかわせた ことだけなのだ」 シドは おれいをいうと、馬にまたがり たびにでた。そして、このものがたりを人々にはなし、しあわせを わけあたえつづけた。かれにとって このたびとは あらたな 下ごしらえの はじまりだったのだ。 おわり
●うさぎとカメとふくろう
![(一)むかしむかし、わかやまけん由良のてらだというところに、 小さな山がありました。その山には、うさぎさんとカメさんと ふくろうさんが、なかよくくらしていました。 ある日のこと、 うさぎさんがカメさんにこういいました。「もしもしカメさん、 むかしむかしのず~とむかし、わたしのごせんぞさまが、 カメさんのごせんぞさまときょうそうしてまけた、 というはなしを、きいたことがありますか」](https://kodomoatelier.com/wordpress/wp-content/uploads/2021/10/usagi01.png)
むかしむかし、わかやまけん由良のてらだというところに、 小さな山がありました。その山には、うさぎさんとカメさんと ふくろうさんが、なかよくくらしていました。 ある日のこと、 うさぎさんがカメさんにこういいました。「もしもしカメさん、 むかしむかしのず~とむかし、わたしのごせんぞさまが、 カメさんのごせんぞさまときょうそうしてまけた、 というはなしを、きいたことがありますか」
![(二)「ウンきいたとも。なんでもうさぎさんのごぜんぞさまが、とちゅうでひるねしたんだって…それでまけたというはなしだろう」「ええ、でもかんがえてみたら、ごぜんぞさまがひるねさえしなければ、きっと、かっていたにちがいないんです」「さあ、それはわからないよ」「そうおっしゃるなら、どうです、もういちど、わたしたちできょうそうしませんか」と、うさぎさんがいいだしたので、カメさんもかんがえて](https://kodomoatelier.com/wordpress/wp-content/uploads/2021/10/usagi02.png)
「ウンきいたとも。なんでもうさぎさんのごぜんぞさまが、とちゅうでひるねしたんだって…それでまけたというはなしだろう」「ええ、でもかんがえてみたら、ごぜんぞさまがひるねさえしなければ、きっと、かっていたにちがいないんです」「さあ、それはわからないよ」「そうおっしゃるなら、どうです、もういちど、わたしたちできょうそうしませんか」と、うさぎさんがいいだしたので、カメさんもかんがえて
![(三)(ピョンピョンはねるうさぎさんには、とてもかてるわけないんだ。といって、ごぜんぞさまがかっているのに、ボクがまけてはもしわけないな)と、ずいぶんなやんで、うまいほうほうをかんがえつきました。「いいよ、やってみよう。でも、きょうそうといえば、しんぱんがいるね。どちらがさきにつくか、ふくろうくんにたのんで、山の木の上でみていてもらおう」とカメさんかいうので、うさぎさんももちろんしょうちしました。](https://kodomoatelier.com/wordpress/wp-content/uploads/2021/10/usagi03.png)
(ピョンピョンはねるうさぎさんには、とてもかてるわけないんだ。といって、ごぜんぞさまがかっているのに、ボクがまけてはもしわけないな)と、ずいぶんなやんで、うまいほうほうをかんがえつきました。「いいよ、やってみよう。でも、きょうそうといえば、しんぱんがいるね。どちらがさきにつくか、ふくろうくんにたのんで、山の木の上でみていてもらおう」とカメさんかいうので、うさぎさんももちろんしょうちしました。
![(四)「よ~い、ドン」 うさぎさんはピョンピョン、 カメさんはノソノソ。 「さあ、ごぜんぞさまのめいよをばんかいするわ。カメさんにはぜったいまけないわよ。ひるねなんかするもんですか」 うさぎさんはひっしでピョンピョン。 カメさんはへいきなかおでノソノソ。 山のいっぽんまつの上では、どちらがさきにつくかふくろうさんが、大きな目でみていました。](https://kodomoatelier.com/wordpress/wp-content/uploads/2021/10/usagi04.png)
「よ~い、ドン」 うさぎさんはピョンピョン、 カメさんはノソノソ。 「さあ、ごぜんぞさまのめいよをばんかいするわ。カメさんにはぜったいまけないわよ。ひるねなんかするもんですか」 うさぎさんはひっしでピョンピョン。 カメさんはへいきなかおでノソノソ。 山のいっぽんまつの上では、どちらがさきにつくかふくろうさんが、大きな目でみていました。
![(五)あれあれ、さきにみえたのは、なんとカメさんです。うさぎさんはだいぶおくれて、ハアハアとさかをのぼってきました。 するとふくろうさんが、 「ざんねんだけど、うさぎさんのまけだよ」 とこえをかけました。 「ええっ、あんなにはやくかけてきたのに、もうカメさんがついてるなんて…」 うさぎさんは、くやしくて「エ~ン、エ~ン」となきだしました。](https://kodomoatelier.com/wordpress/wp-content/uploads/2021/10/usagi05.png)
あれあれ、さきにみえたのは、なんとカメさんです。うさぎさんはだいぶおくれて、ハアハアとさかをのぼってきました。 するとふくろうさんが、 「ざんねんだけど、うさぎさんのまけだよ」 とこえをかけました。 「ええっ、あんなにはやくかけてきたのに、もうカメさんがついてるなんて…」 うさぎさんは、くやしくて「エ~ン、エ~ン」となきだしました。
![(六)(でもふしぎだわ。あんなにノロノロしているのカメさんにまけるなんて)うさぎさんは、どうしてもしんじられないので、「カメさん、おねがいですから、もういちどきょうそうをしてくれませんか」とたのむと、カメさんは、あっさりしょうちしました。「よ~い」ドン」で、うさぎさんはピョンピョン。 カメさんはノソノソ。「こんどこそまけるもんですか」](https://kodomoatelier.com/wordpress/wp-content/uploads/2021/10/usagi06.png)
(でもふしぎだわ。あんなにノロノロしているのカメさんにまけるなんて)うさぎさんは、どうしてもしんじられないので、「カメさん、おねがいですから、もういちどきょうそうをしてくれませんか」とたのむと、カメさんは、あっさりしょうちしました。「よ~い」ドン」で、うさぎさんはピョンピョン。 カメさんはノソノソ。「こんどこそまけるもんですか」
![(七)うさぎさんは、こんども、せいいっぱいがんばって、もうすこしで、いっぽんまつだというところまできました。あれれ~カメさんが、すずしいかおをしてとうちゃくしています。ふくろうさんが、「カメさんの、かち~」と、ゆうしょうせんげんをしました。うさぎさんは、くやしくて「エ~ン、エ~ン」と、またなきました。](https://kodomoatelier.com/wordpress/wp-content/uploads/2021/10/usagi07.png)
うさぎさんは、こんども、せいいっぱいがんばって、もうすこしで、いっぽんまつだというところまできました。あれれ~カメさんが、すずしいかおをしてとうちゃくしています。ふくろうさんが、「カメさんの、かち~」と、ゆうしょうせんげんをしました。うさぎさんは、くやしくて「エ~ン、エ~ン」と、またなきました。
![(八)するとそのとき、そらの上からくもがおりてきて、かみさまがあらわれました。かみさまは、きびしいこえで、 「これ、ずるいカメよ。それにもういっぴきのカメもでてきなさい」といわれました。するとどうでしょう、そっくりなカメがノソノソとでてきました。びっくりしているうさぎさんに、「このカメは、まけるのがわかっていたので、もういっぴきのカメにたのんで、この木のちかくにかくれてもらい、](https://kodomoatelier.com/wordpress/wp-content/uploads/2021/10/usagi08.png)
するとそのとき、そらの上からくもがおりてきて、かみさまがあらわれました。かみさまは、きびしいこえで、 「これ、ずるいカメよ。それにもういっぴきのカメもでてきなさい」といわれました。するとどうでしょう、そっくりなカメがノソノソとでてきました。びっくりしているうさぎさんに、「このカメは、まけるのがわかっていたので、もういっぴきのカメにたのんで、この木のちかくにかくれてもらい、
![(九)さも、じぶんがいっしょうけんめいかけてきたようにみせかけたのじゃ。そうであろうが」カメさんたちは、すっかりおそれいり、こうらのなかにくびをひっこめてしまいました。 かみさまは、 「このおうちゃくものめ」 といって、2ひきのカメのせなかを、ピシリ、ピシリとうちすえました。すると、カメさんのせなかのこうらに、ひびがはいり、6かくや8かくのもようになりました。](https://kodomoatelier.com/wordpress/wp-content/uploads/2021/10/usagi09.png)
さも、じぶんがいっしょうけんめいかけてきたようにみせかけたのじゃ。そうであろうが」カメさんたちは、すっかりおそれいり、こうらのなかにくびをひっこめてしまいました。 かみさまは、 「このおうちゃくものめ」 といって、2ひきのカメのせなかを、ピシリ、ピシリとうちすえました。すると、カメさんのせなかのこうらに、ひびがはいり、6かくや8かくのもようになりました。
![(十)それから、かみさまは、しんぱんをしたふくろうにおせっきょうです。 「これふくろうよ。おまえのまあるいめは、いったいなんのためについているのだ。ただしいことがみえないようなめだまなら、もうひるまはいらないだろう。よるだけみえるめだまに、とりかえてやろう」 といって、ふくろうさんのめだまを、よるしかみえないのと、とりかえてしまいました。だから、ふくろうさんは、いまでもひるまはめがみえないのです。](https://kodomoatelier.com/wordpress/wp-content/uploads/2021/10/usagi10.png)
それから、かみさまは、しんぱんをしたふくろうにおせっきょうです。 「これふくろうよ。おまえのまあるいめは、いったいなんのためについているのだ。ただしいことがみえないようなめだまなら、もうひるまはいらないだろう。よるだけみえるめだまに、とりかえてやろう」 といって、ふくろうさんのめだまを、よるしかみえないのと、とりかえてしまいました。だから、ふくろうさんは、いまでもひるまはめがみえないのです。
![(十一)さいごに、かみさまは、ず~とないているうさぎさんにいいました。 「これからも、しょうじきにくらしなさい。わたしは、いつでもみているからな」 といって、あっというまに、くもにのって、そらたかくもどっていかれました。うさぎさんは、あんまりなきすぎたんで、めがまっかになってしまいました。かみさまに、なおしてもらうのをわすれたうさぎさんのめは、それからもず~とあかいということです。 おわり](https://kodomoatelier.com/wordpress/wp-content/uploads/2021/10/usagi11.png)
さいごに、かみさまは、ず~とないているうさぎさんにいいました。 「これからも、しょうじきにくらしなさい。わたしは、いつでもみているからな」 といって、あっというまに、くもにのって、そらたかくもどっていかれました。うさぎさんは、あんまりなきすぎたんで、めがまっかになってしまいました。かみさまに、なおしてもらうのをわすれたうさぎさんのめは、それからもず~とあかいということです。 おわり
●牛になったわかもの
![(一)むかしむかし、京都の丹後というところに、三人の若者が いました。あるとき、お伊勢まいりをしようということに なって旅に出ました。 ある山の中で、日が暮れてしまった ので、野宿でもしようかと、話をしながら歩いていくと むこうの方に、一軒の家のあかりが見えました。その家には おばあさんがひとりすんでいました。](https://kodomoatelier.com/wordpress/wp-content/uploads/2021/10/ushi01.jpg)
むかしむかし、京都の丹後というところに、三人の若者が いました。あるとき、お伊勢まいりをしようということに なって旅に出ました。 ある山の中で、日が暮れてしまった ので、野宿でもしようかと、話をしながら歩いていくと むこうの方に、一軒の家のあかりが見えました。その家には おばあさんがひとりすんでいました。
![(二)おばあさんは「こんな粗末なところでよければ、 一晩とまってゆくがええ」といいながら、気持ち良く三人を 迎えいれてくれました。何もないが、今晩はどれ、餅でもやいてやろうかね。あしたの朝は、うまいものを たんとつくってやるだ」といろりの火で、もちをひとつずつ やいてくれました。 三人の若者は、とてもおなかがすいたので、もっと食べたかったのですが、我慢してねむりました。](https://kodomoatelier.com/wordpress/wp-content/uploads/2021/10/ushi02.png)
おばあさんは「こんな粗末なところでよければ、 一晩とまってゆくがええ」といいながら、気持ち良く三人を 迎えいれてくれました。何もないが、今晩はどれ、餅でもやいてやろうかね。あしたの朝は、うまいものを たんとつくってやるだ」といろりの火で、もちをひとつずつ やいてくれました。 三人の若者は、とてもおなかがすいたので、もっと食べたかったのですが、我慢してねむりました。
![(三)夜中のことです。三人の中で、いちばん太っている若者が あまりにもはらがへってねむられず、めをさましました。 すると、なにやら声がするのでそっとおきてみると おばあさんがかみをきって、ブウっと、いきをふきかけています。 それがたくさんのこびとになってワイワイ、ガヤガヤ…。 はてなとおもってみていると、たくさんのこびとたちが、 畑へでてそばの種をまきました。](https://kodomoatelier.com/wordpress/wp-content/uploads/2021/10/ushi03.png)
夜中のことです。三人の中で、いちばん太っている若者が あまりにもはらがへってねむられず、めをさましました。 すると、なにやら声がするのでそっとおきてみると おばあさんがかみをきって、ブウっと、いきをふきかけています。 それがたくさんのこびとになってワイワイ、ガヤガヤ…。 はてなとおもってみていると、たくさんのこびとたちが、 畑へでてそばの種をまきました。
![(四)そうすると、みるみるまに花がついて、実がみのって小人たちが、 せっせと刈り取って臼にかけて粉にしました。そうして、おばあさんは 夜明けまでかかって、おいしそうなそばをつくりあげました。 ずっと見ていた若者は、「わしは食わんでおこう。」と思って、 寝たふりをしました。 朝になって、おばあさんは、「そばをた~んと打ったので、 腹いっぱい食べたらいいだ。」と、夕べのそばをだしてきました。](https://kodomoatelier.com/wordpress/wp-content/uploads/2021/10/ushi04.png)
そうすると、みるみるまに花がついて、実がみのって小人たちが、 せっせと刈り取って臼にかけて粉にしました。そうして、おばあさんは 夜明けまでかかって、おいしそうなそばをつくりあげました。 ずっと見ていた若者は、「わしは食わんでおこう。」と思って、 寝たふりをしました。 朝になって、おばあさんは、「そばをた~んと打ったので、 腹いっぱい食べたらいいだ。」と、夕べのそばをだしてきました。
![(五)夕べのことを見ていた若者は、食べたようにみせかけて、 食べませんでしたが、ほかの二人は「うまい、うまい。」と いって、五杯も食べてしまいました。 そうしたら、おなかが急に大きくなって、すぐには旅に出れなく なってしまいました。 「くった、くった。ちょっと寝よう、寝よう」といって、 二人はすぐにまた寝てしまいました。](https://kodomoatelier.com/wordpress/wp-content/uploads/2021/10/ushi05.png)
夕べのことを見ていた若者は、食べたようにみせかけて、 食べませんでしたが、ほかの二人は「うまい、うまい。」と いって、五杯も食べてしまいました。 そうしたら、おなかが急に大きくなって、すぐには旅に出れなく なってしまいました。 「くった、くった。ちょっと寝よう、寝よう」といって、 二人はすぐにまた寝てしまいました。
![(六)そばを食べなかった若者も、寝たふりをしていると、 おばあさんが、綱を持って入って来ました。 「どれ、どれ、おとなしくしろや。 これだけりっぱなら、高く売れるわい。」 といって、そばを食べた二人を綱でくくりました。 みると、二人は大きな牛にかわっていました。 牛にならなかった若者におばあさんは言いました。](https://kodomoatelier.com/wordpress/wp-content/uploads/2021/10/ushi06.png)
そばを食べなかった若者も、寝たふりをしていると、 おばあさんが、綱を持って入って来ました。 「どれ、どれ、おとなしくしろや。 これだけりっぱなら、高く売れるわい。」 といって、そばを食べた二人を綱でくくりました。 みると、二人は大きな牛にかわっていました。 牛にならなかった若者におばあさんは言いました。
![(七)「おまえは、夕べのことを見ておったな。」 若者は、「何も知らん。」というと、 「今見たことは、ぜったいしゃべるな。」といって 逃がしてくれました。 それから…「ごはんを食べてすぐに寝ると、うしになる。」 ということです。 おわり](https://kodomoatelier.com/wordpress/wp-content/uploads/2021/10/ushi07.png)
「おまえは、夕べのことを見ておったな。」 若者は、「何も知らん。」というと、 「今見たことは、ぜったいしゃべるな。」といって 逃がしてくれました。 それから…「ごはんを食べてすぐに寝ると、うしになる。」 ということです。 おわり
●ねずみのよめいり
![(一)むかしむかし、あるところにかしこいネズミさんがすんでいました。 ネズミさんには、目に入れても痛くないくらいかわいいむすめさんが いました。「せかいでいちばんえらいひとのところへ、よめにやりた いんだが…」といって、おむこさんをさがしていました。それを聞い た、となりのネズミさんが「せかいでいちばんえらいひとといったら それは、まあお日さまですな」というので、おとうさんネズミは、お 日さまのところへでかけていきました。](https://kodomoatelier.com/wordpress/wp-content/uploads/2021/10/nezumi01.png)
むかしむかし、あるところにかしこいネズミさんがすんでいました。 ネズミさんには、目に入れても痛くないくらいかわいいむすめさんが いました。「せかいでいちばんえらいひとのところへ、よめにやりた いんだが…」といって、おむこさんをさがしていました。それを聞い た、となりのネズミさんが「せかいでいちばんえらいひとといったら それは、まあお日さまですな」というので、おとうさんネズミは、お 日さまのところへでかけていきました。
![(二)「せかいでいちばんえらいお日さま、どうかうちのむすめを、 よめにもらってください」と、たのみました。そしたら、おひさまは、 「いやいや、わたしはそんなにえらくない。雲さんのほう がもっとえらいぞ。雲さんは、わたしをつつんで、まぶしいひか りをくらくしてしまうしな。とても雲さんにはかなわないよ」と いわれました。 そこで、おとうさんネズミは、雲さんのところへいきました。](https://kodomoatelier.com/wordpress/wp-content/uploads/2021/10/nezumi02.png)
「せかいでいちばんえらいお日さま、どうかうちのむすめを、 よめにもらってください」と、たのみました。そしたら、おひさまは、 「いやいや、わたしはそんなにえらくない。雲さんのほう がもっとえらいぞ。雲さんは、わたしをつつんで、まぶしいひか りをくらくしてしまうしな。とても雲さんにはかなわないよ」と いわれました。 そこで、おとうさんネズミは、雲さんのところへいきました。
![(三)「せかいでいちばんえらい雲さん、どうかうちのむすめを、 よめにもらってください。と、たのみました。 そしたら、 雲さんは、「いやいや、風さんのほうがもっとえらいぞ。 風さんはつよい風で、わたしをふきとばしてしまうし、さむい 風ふかして、きものをきせたり、あったかい風をふかしては、 うわぎをぬがすし、ほんとうにえらいものだ」 といわれました。 そこで、おとうさんネズミは、つぎに風さんのところへ いきました。](https://kodomoatelier.com/wordpress/wp-content/uploads/2021/10/nezumi03.png)
「せかいでいちばんえらい雲さん、どうかうちのむすめを、 よめにもらってください。と、たのみました。 そしたら、 雲さんは、「いやいや、風さんのほうがもっとえらいぞ。 風さんはつよい風で、わたしをふきとばしてしまうし、さむい 風ふかして、きものをきせたり、あったかい風をふかしては、 うわぎをぬがすし、ほんとうにえらいものだ」 といわれました。 そこで、おとうさんネズミは、つぎに風さんのところへ いきました。
![(四)「せかいでいちばんえらい風さん、どうかうちのむすめを、 よめにもらってくれませんか」というと、風さんは 「わたしより、もっとえらいひとがいる。それは壁さんです。 壁さんにもらってもらいなさい」と、いいました。 「壁さんがどうしてえらいんですか」と、おとうさんネズミがきくと、 「壁さんがたちはだかると、わたしがふいてもとめられたり、びくとも しないので、わたしよりえらいのです。](https://kodomoatelier.com/wordpress/wp-content/uploads/2021/10/nezumi04.png)
「せかいでいちばんえらい風さん、どうかうちのむすめを、 よめにもらってくれませんか」というと、風さんは 「わたしより、もっとえらいひとがいる。それは壁さんです。 壁さんにもらってもらいなさい」と、いいました。 「壁さんがどうしてえらいんですか」と、おとうさんネズミがきくと、 「壁さんがたちはだかると、わたしがふいてもとめられたり、びくとも しないので、わたしよりえらいのです。
![(五)そういわれたので、おとうさんネズミは、こんどは、 壁さんのところへいきました。 「どうでしょう、壁さんがせかいでいちばんえらいと ききましたので、うちのむすめをよめにもらってくれませんか」 とたのむと、壁さんは、 「わたしより、もっとえらいひとがいます。そのひとに、 もらってもらえばどうですか」と、いわれました。 「壁さんよりえらいひとって、だれですか」ときくと、](https://kodomoatelier.com/wordpress/wp-content/uploads/2021/10/nezumi05.png)
そういわれたので、おとうさんネズミは、こんどは、 壁さんのところへいきました。 「どうでしょう、壁さんがせかいでいちばんえらいと ききましたので、うちのむすめをよめにもらってくれませんか」 とたのむと、壁さんは、 「わたしより、もっとえらいひとがいます。そのひとに、 もらってもらえばどうですか」と、いわれました。 「壁さんよりえらいひとって、だれですか」ときくと、
![(六)「それは、ネズミさんです。ネズミさんはどんなにあついかべでも、がりがりとかじってあなをあけてしまいます。だから、いちばんえらいのはネズミさんですよ」おとうさんネズミは、さっそく、おとこらしいネズミをさがしてきて「ネズミが、このよのなかで、いちばんえらいということがわかったので、うちのむすめのむこになってください」と、たのみました。 はなしがまとまったので、しばらくして、よいひをえらんで、ネズミの よめいりがありましたとさ。めでたし、めでたし。 おわり](https://kodomoatelier.com/wordpress/wp-content/uploads/2021/10/nezumi06.png)
おわり
●イソップ物語
![きつねとぶどう](https://kodomoatelier.com/wordpress/wp-content/uploads/2021/10/easop01-768x518.jpg)
![よくばりな犬](https://kodomoatelier.com/wordpress/wp-content/uploads/2021/10/easop02-768x518.jpg)
![うそつきなひつじかいの少年](https://kodomoatelier.com/wordpress/wp-content/uploads/2021/10/easop03-768x518.jpg)
![くじゃくとツル](https://kodomoatelier.com/wordpress/wp-content/uploads/2021/10/easop04-768x518.jpg)
![カニのおやこ](https://kodomoatelier.com/wordpress/wp-content/uploads/2021/10/easop05-768x518.jpg)
![ライオンとネズミ](https://kodomoatelier.com/wordpress/wp-content/uploads/2021/10/easop06-768x518.jpg)
![牛とカエル](https://kodomoatelier.com/wordpress/wp-content/uploads/2021/10/aesop07-768x518.jpg)
![おなかのふくれたキツネ](https://kodomoatelier.com/wordpress/wp-content/uploads/2021/10/aesop08-768x519.jpg)